実写版『バクマン。』、すごく「友情・努力・勝利」で週刊少年ジャンプしていてめちゃくちゃ面白かったという話。
はちゃめちゃな語彙で作り上げたタイトルですが、わりとこんな感じで楽しんできました。実写版バクマン。
基本的に漫画の実写化にはシニカルな立場をとってるんですが、これは良いです、一瞬でアツくなりました。
というわけで感想でもつらつら。
「友情・努力・勝利」
週刊少年ジャンプといえばこれでしょう、お約束。
原作の「バクマン。」の方では実際にはここで小豆との恋愛要素が結構関わってくるわけですが、この実写版、かなり恋愛を削ってきてます。そもそも小豆が名づけの親になる”亜城木夢叶”というPNが登場しないレベル。でも、でもです。
その代わりにストーリーの主軸となるのは「新妻エイジとのアンケート順位争い」。
これがめちゃくちゃいい。この改変が本当に効いてきてる。
漫画以上にその競争に焦点が絞られ、物語全体が綺麗に引き締まってます。
しかも「友情・努力・勝利」のジャンプ王道漫画という”最強への方程式”を存分に扱いながら進むストーリーはもう原作とは別物と言えます。
身を削って、精神をすり減らして、しかし勝利を掴もうとするサイコーとシュージン。
ほんとにこれがめっちゃくちゃアツい。
正直漫画版よりアツいまである。映画で忠実にジャンプメソッドを作り上げてるのがほんとすごい。
それと後述しますが、線を引く音がかなり物語の劇伴のような扱われます。これがシーンごとにこう、意味を持っている気がして、とてもいい。
「音」
私がこのぐいーっと引き込まれたのが、映画という媒体特有の音と動き、漫画では伝わらない五感をフル動員してんなーという演出。
週間少年ジャンプはじめ漫画に慣れ親しんだ人ならだれしも一度はつけペンとインクを買ってきて漫画を描こうとすることがあると思うのですけれど、その時の感覚、つけペンで線を引く感覚というのが音で伝わってくるんですよね。えっそんな経験ない、そんなまさか……。
とはいえ、つけペンの「シャーーーーーーッ」って感覚がすごい伝わってくるんですよ。Gペンの「ガリっ」って感覚とかすごい音と映像で表現している。
たぶんこれ経験なくても結構迫力あるんじゃないかと思います。紙にインクが載っていく感じや、削っていく感じ。
劇伴も相まってめちゃくちゃかっこいいし、むしろつけペンとか使ったことない人にこそ味わってほしいとも思う。
「キャスティング」と「汚れ」
キャスティングに関しては、PVというか予告やキービジュアルが公開された時原作読者の誰もが「サイコーとシュージン逆じゃね」という疑問符を浮かべたんじゃないかと思いますが、これ、5分で慣れます。
観賞後はむしろこれしかありえんと思えるレベルではまってる。
絶対役者は童貞じゃないと思うんですけど、めちゃくちゃ童貞っぽい演技がうまいし、諸々の動きとか逆だったらむしろ違和感があったかもしれないです。
あとこのキャストたち、インク汚れがかなり似合う。めっちゃ男臭い。でもそれがいいんですよねえ……。いやまあそんな汚れんでしょというのは置いておいても。
「ほかこまごましたとこ」
あとキャラクター毎に線の引き方とか音とか、どういう風にべたを塗りつぶすのかとか細かく分けてて芸コマだなあとも。エイジがマジックで感覚的に塗りつぶしていくのと対照的に中井さんがカケアミしてたりだとか。
もちろん漫画の作業工程は省略されて描かれてはいますけれども、決してこう雑にしている感じがないのはめちゃくちゃ好印象でした。
そんな感じでこう、週刊少年ジャンプ的な王道ストーリーが好きな方には是非観ていただきたい映画でした。
「実写版なんて結局焼き直しの劣化コピーでしょう?」
なんて思わず観てほしいなと。
ちゃんと映画という媒体で少年漫画を再構成しているので、一見の価値はあると思いますよ。
おわり。